バイク便ライダーを長く続けていると、時に「え、これを運ぶの!?」と二度見してしまうような荷物に出会うことがあります。
一番記憶に残っているのは、ある真夏の午後に飛び込んできた緊急案件。大手テレビ局から指定された引き取り先に向かうと、渡されたのはなんと「1匹のクワガタ」でした。どうやら特番の生放送で使う主役級の個体らしく、万が一にも死なせてはならないと、厳重に温度管理された小さな虫かごをリュックに固定し、冷や汗をかきながら都内を爆走しました。無事にスタジオへ届け終えたときの達成感は、重要書類を運んだとき以上だったかもしれません。
また、お届け先のお客様からいただいた「お礼」も忘れられません。真冬の寒い日に、あるおばあちゃんのご自宅へお薬を届けた際、「寒かったでしょう、これ持って行きなさい!」と持たせてくれたのは、新聞紙に包まれたホカホカの焼き芋と、なぜか大量の「自家製らっきょう」。
バイクのリアボックスを開けるたびに、しばらく甘酸っぱい香りがヘルメットいっぱいに広がって苦笑いしましたが、あの凍えるような寒さの中で感じた人の温かさは、今でも胸に深く残っています。
書類だけじゃない、ドラマも一緒に運ぶ。だからこの仕事はやめられません。
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